やりなおし世界史
あっ、文庫になっている、と心の声を漏らすことがある。
一、二年くらい前、中公文庫の書棚で視線を泳がせていると、浮きが沈んだときの釣人にわたしはなった。獲物が掛かったのだ。急いでリールを巻いてみる。すると、上下を有する双子の書物が釣り上がった。と、冗談はこれくらいにして、本の紹介めいたことをやってみるか。
作者はエルンスト・H・ゴンブリッチ。この人には二つの顔があって、一つは美術史の研究者として一家をなした人。『楽園のカンヴァス』を書いた原田マハさんも、この先生の著作から勉強をはじめたらしい(「作家の読書道」というWEBサイトより。このサイトとても為になりますよ)。そしてもう一つの顔は、誠実な歴史学者として、若い読者に世界史を語るお兄さん。お兄さんというのは、この大先生、なんと25歳でこの本を書いたらしい。驚きの一言です。
しかし、もっとも読者の心を打つのは、「50年後のあとがき」という小文である。我々が歴史学者に求めるものは、学界の権威でもなければ、その学者の多芸さでもなくて、誠実な人間性ではないだろうか。この書物を片手に、一人こんなことを考えた。
若い読者のための世界史(上) - 原始から現代まで (中公文庫)
- 作者: エルンスト・H・ゴンブリッチ,中山典夫
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2012/04/21
- メディア: 文庫
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若い読者のための世界史(下) - 原始から現代まで (中公文庫)
- 作者: エルンスト・H・ゴンブリッチ,中山典夫
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2012/04/21
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