名探偵ストンとわたしの共同事務所

調子はずれで個人的な雑談を繰り広げます。正直いって、ぼくは頭がオカシイです。テーマは、読書や映画、アニメ、日々の出来事、つまらない小ネタが中心でくだらない(笑)。寛容の心で読み流していただけたら幸いです。    <注>コメントや質問は大歓迎ですが、念のため承認制にしてあります。

大阪の暮らしの匂い

 もう一度人生があるなら関西弁の女性がいいです。これは絶対です。できれば神社の娘がよくて、狐顔で涼しい感じ。髪は黒色。年は四つか五つ上でわりと気の強い性格。思いっきりがよくて、後ろから色白の腕でぼくの首を覆うように……

 ブログを読むみなさん「はあ? 二度目なんだよ、このバカヤロー バキッ!!( -_-)=○☆)>_<)アウッ! ←ぼく」

 サーセン。ぐだぐだ弁解するまえにあらすじを(「夫婦善哉」のあらすじです。この本には全部で六つの短篇が入っています)


〈天ぷら屋の娘の蝶子がこの小説のヒロイン。蝶子の父親が営むお店は、具が大きくて、それで味もいいくせに利益がでない。借金取りが出入りするほどやり繰りに困っている。蝶子は子供ながらにして気づいたが、彼女の父親は経理を知らない人で、主な材料費以外の醤油や炭の費用を無視して帳簿を付けていた。これでは商売にならない。
 蝶子は女中奉公を経て、17歳のとき芸者の道を選ぶ。これは家計を助けるためではなく、あくまでも本人の意思によるもので、歌や芸などの才は乏しいものの、天性の明るさでお客をとっていく。
 
 そのなかに、現代でいうダメンズの柳吉がいた。柳吉の齢は31でとうぜん妻子持ち。病気で臥せがちの父親に代わり、理髪店向けの商品の卸しをする。けっこうなボンボンであり、世渡りが下手なタイプ。蝶子のところへ度々通って散財したあげく勘当を受け、柳吉と蝶子は駆け落ちして共に暮らしはじめる。
 
 半人前にも満たない柳吉を一人前にと、そして二人で商売をするため蝶子はヤトナ芸者(臨時雇いの芸者)をしつつお金を貯めるが、柳吉はそれを女遊びなどに使い込む始末。二人はくっついたり離れたり忙しく、蝶子の折檻にも懲りず柳吉は体たらくだが、それでも夫婦生活をつづけていって……〉

 
 罪滅ぼしにやや詳しい筋の紹介をしました。これで許してください。これを読んで思うことは、うちのカミさんが蝶子と似ているかはともかく、ぼくは柳吉タイプですね。人並みのお給金をもらうのが本当に遅かったし、憂さを晴らすためにわりと無駄使いもしていたから、若干生きていて恥ずかしく、当時のことを思い出すとホロリときます(でも女遊びはしてないよ、一応名誉のためにね 笑)。
 
 だから若いときは敬して遠ざけていたけれど、いま読むとすこぶる感慨深くて、しかしどうして柳吉は学ばないのだろうと思うし、蝶子もよく愛想を尽かさないなあ~とも思う。それでもこの二人の仲を裂きたいと読み手に思わせない何かがあって、それがまさに夫婦当人たちにしか分かりえぬ、いや、当人たちも時に見失う男女の機微なのだ。この機微と織田作之助一流の大阪の暮らしの匂い、この二つを存分に味わってほしい。
 結びに代えて余談になるが、森見さんの小説に(「夜は短し~」だったかしら)、織田作之助の全集を読む、すごく感じのいいおばあさんがいたことを思い出し、もしや、彼女も「夫婦善哉」を……と心のうちで訝った。

 

夫婦善哉 (新潮文庫)

夫婦善哉 (新潮文庫)