イタリアのある家族の物語
いいものを見たなあ~というあの感じ、静かな感動、背筋がすこしピンとなり胸が火照る。久しぶりにしじみの味噌汁を飲むよう。これがあるから読書はやめられない、映画やドラマもまた然り。これはイタリアが生んだ家族の物語。
イタリア文学ってあまり馴染みがないと思いません?ヨーロッパのおもだった国のなかでは、作家名や作品名が出てこない方ではないかしら。たとえば作家名、ダンテ、ボッカッチョ、ウンベルト・エーコ、アントニオ・タブッキ、イタロ・カルヴィーノ、あっマンゾーニを忘れていた。そして戯曲ではピランデッロの名を耳にするくらい、もちろん読んだことはない。これでは山手線ゲームはできないよ。
どうしてなんでしょう?その理由のひとつに、すぐれた紹介者の不在があると思う。なぜなら外国文学の作品は、翻訳で読むわたしたちにとって、原作者とおなじくらい訳者が成功の鍵をにぎるからだ。それは須賀敦子さんが証明している。『ある家族の会話』を訳したのち、須賀さんはみずから小説をつくるようになった。ナタリア・ギンズブルグに魅せられ、彼女に学んだのである。
こういう巡り合わせが自国の文学をゆたかにする。翻訳文化に感謝して、この『ある家族の会話』を存分に楽しんでほしい。とくに、プルーストの大長篇に挫折してしまう人におすすめ。著者のナタリア・ギンズブルグは、たくさんいるプルーストの弟子の一人だし、この小説はそれほど長くないから。ちなみに、『チーズとうじ虫』で名を馳せた歴史家カルロ・ギンズブルグは彼女の子息である。
- 作者: ナタリアギンズブルグ,Natalia Ginzburg,須賀敦子
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 1997/10
- メディア: 新書
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