名探偵ストンとわたしの共同事務所

調子はずれで個人的な雑談を繰り広げます。正直いって、ぼくは頭がオカシイです。テーマは、読書や映画、アニメ、日々の出来事、つまらない小ネタが中心でくだらない(笑)。寛容の心で読み流していただけたら幸いです。    <注>コメントや質問は大歓迎ですが、念のため承認制にしてあります。

ポリアンナの生みの親

<あらすじ>

妹「ねぇ、ねぇ、スウ姉さんってば、スウ姉さんどこ?」
弟「スウ姉さん、ぼくの靴下知らない?」
父「スウ、家のことはみんなおまえに任せたぞ」

 母親を亡くしたギルモア一家は、いちばん上の長女スウ姉さんに、家のことの一切を任せきりだった。その当の本人のスウ姉さんは、ピアニストになるという自分の夢、リサイタルで聴衆から拍手喝采をあびる将来を胸の内にしまい、家の切り盛りに精を出すことに決めた。なぜなら、自分を心から愛してくれる婚約者のマルチ・ケントがいたから。
 
 しかし、父親の経営する銀行が破綻すると事態は一変する。ギルモア一家は、借財の形を免れた田舎の別荘へ居を移すことになる。精神をやられた父親の面倒から、今までメイドに任せていた料理などもスウ姉さんの仕事。彼女には自分の時間はあまりなく、調律の不十分の古いピアノだけが心の慰めだった。が、そのピアノすら手放す必要があるほどお金はなく、それでもスウ姉さんは、持ち前のユーモアで家を盛り上げ、得意のピアノを教えることで生活費も稼ぐようになる。
 婚約者のケントは小説家で、彼の書いた作品はベストセラーにもなったのだが、彼はたまにしかスウ姉さんの住む田舎を訪ねてこない。まれに長期滞在しても、小説家志望の妹と過ごすほうが増えていって……。

 (すみません、物語の順序はあいまいですが、雰囲気はなんとか再現できていると思います)


<補足の説明と感想>

 椰月美智子さんの『しずかな日々』を読むまえに、じつは彼女の『るり姉』という小説を先に読んでいて、さらにそのまえにエレナ・ポーターの『スウ姉さん』を読み直した。
 『るり姉』の書名を見たと同時に『スウ姉さん』を思い出すのは自然だと思うし、昨年、河出書房新社から再刊したこの文庫本を気に掛けていたのかもしれない。ちなみに、『るり姉』と『スウ姉さん』の内容はあまり似通っていない。

 著者のエレナ・ポーターは、本人の名前よりも彼女の作品を原作とした「愛少女ポリアンナ物語」の方がおそらく有名だろう。あのよかった探しポリアンナの生みの親と聞き、その懐かしさのあまり感銘を受ける人もいると思う。ポリアンナだけでなく、「世界名作劇場」の枠で放送されたアニメはどれも一級品で、ぼくは「ペリーヌ物語」と「ロミオの青い空」が好きでした(笑)。

 
 まあアニメの話は脇において、この『スウ姉さん』とてもおもしろいです。でもね~、これを読むと自分の好みの女性がよく分からなくなる。たとえば、男は本当に自分の都合のいい女が好きなのか? とかね。だって、自分の愛する人がスウ姉さんみたいに窮屈していたら、それはそれは複雑な気持ちになるんじゃないかな? と今のぼくは思います。
 ところがスウ姉さんは、たしかに窮屈はしているのだけれど、家族のために尽すことに喜びを感じているんです。この辺りの事情がむずかしい。婚約者のケントは何度も言いました。
「あなたはもっと自分の人生を生きるべきです」
しかしスウ姉さんは取り合わなかった。これは本当にかしこい選択なのか。いいえ、おそらく賢明な判断ではないと思います。でもまちがいではない、いいや時と場合によっては、それが家族全体の幸福を支えるかもしれない。
 こういう葛藤に苛まれている、今を生きるスウ姉さんたちに読んでほしい一冊です。

追伸  
 読んだあと三日くらいは家事を手伝おうという殊勝な心掛けが生まれます (^∇^)アハハハハ! ヾ(-д-;)ぉぃぉぃ

 

スウ姉さん (河出文庫)

スウ姉さん (河出文庫)