眠れぬ夜に犬について思うこと
三十代の半ば頃から、誕生日から梅雨明けにかけて余り寝つけない日々がつづく。元来体力はあるほうで、ごろりと横になれば体の疲れは楽になるが、それよりも眼を休ませることが大事。だから部屋を真っ暗にして、完ぺきに光を遮断して布団に入る。恥ずかしい話だが、一人で眠るときは豆電球をつける。
隣の布団からピアニシモな寝息が聞こえたとき、ぼくの眠れない夜もはじまる。この頃よく考えることは、やはりもし独りになってしまったときのことだ。家内は四つ上で、日本の平均寿命を考えるとたぶんぼくが先だと思うし、いまの健康状態からいってもおそらくそうなると思うが、まあ人生には事故やら急な病気やらが付き物だからすこし怖い。
そこで猫を飼ってはどうだろう? とまず猫を候補にしてみるが(ぼくは猫好きで、だから今年のカレンダーはこれにした)、猫は余り孤独を癒してくれない気もする。好き勝手自由に行動するからね。夢のような話をすれば、映画「ハリーとトント」がぼくの理想であり、トントのような猫と毎日神社で遊べればそれでいいのだが、やっぱりあれは非現実的だ。
映画といえば、最近おもしろい犬の映画をみた。タイトルは「犬と私の10の約束」。かんたんな筋を紹介すると、
〈主人公の斎藤あかりの母親が重い病気となり、あまりながく生きられないと分かるところから物語の幕があく。ある日、庭にひょっこりと姿をみせた犬を飼いたいとあかりは母親に相談し、母親はそれを許可した。自分があかりを見守っていけない代わりに、その犬(名前はソックス)にあかりのことを託そうとしたのだ。母親はソックスと10の約束をすることを娘にお願いした。そしてまもなく母親は逝き、その約束を守りながら父親とソックスと三人家族で暮らしはじめて……。〉
ぼくが涙もろいせいか、けっこう泣いてしまった。父親の変化とソックスの健気さに心打たれるのだ。正直いって、犬のすばらしさに目覚めてしまった。犬は孤独を慰めてくれる力をもっている。しかし飽きっぽいぼくに犬の世話などできるのだろうか? う~ん、たぶんむずかしそう。結局いつも通り、世話好きな女性が必要だと結論を下す三歩まえで浅い眠りへと落ちていった。
(来年のカレンダーは、たくさんの犬の写真付きのものを買うつもりです)
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