エッセイ又は随筆
子どものころ、空港などで見かけるまっ平らなエスカレーターに憧れた。ふつうに歩くのと見える景色はちがうのだろうか? と興味津々だった時分にはついに利用することはなく、すこし前がつっかえたくらいでイライラしてしまう年齢になってはじめて乗ったせい…
三十代の半ば頃から、誕生日から梅雨明けにかけて余り寝つけない日々がつづく。元来体力はあるほうで、ごろりと横になれば体の疲れは楽になるが、それよりも眼を休ませることが大事。だから部屋を真っ暗にして、完ぺきに光を遮断して布団に入る。恥ずかしい…
このごろ、仕事場から帰るとき、遠回りをして川べりの道を通る。この道は公園の一部であり、ささやかな夜桜を見ることができる。花びらが道に広がってきたものの、まだ周りを見渡せる風情はあって、薄ぼんやりと光る電灯の演出が憎い。しかし、本当に憎たら…