おすすめの詩集
<素頓狂堂書店>
へぇ~そうですか、詩がお好きなんですか? いい詩集を仕入れたので、あちらで少々お待ちください。ピントのはずれた男が詩について語ります。
詩とは誠に不思議なもので、自分が受けた感銘を相手に上手く伝えにくい。芸術やエンタメ全般にそういう傾向があるけれど、詩はそれがことさら顕著だ。詩の味とは、子供のころ虫取り網を持って追いかけた昆虫であり、大人になってから人付き合いの場以外で飲むときのお酒である。
アニメ会社のディズニーは、子供と、「大人の中にある子供心」に向けて映画を作り、一方同じくアニメ会社のドリームワークスは、大人と、「子供の中にある大人心」に向けて映画を作るらしい。しかし詩人は、その両方を刺激することを狙っているし、それが成功している詩も数多い。私たちが詩を読むとき、子供になったり大人になったりするのはその所為(せい)で、心の変化が忙しいのだ。そうして、詩は変わらなくても、私たちはだんだん変わっていく。
お待たせしました。童話屋の『ポケット詩集』です。他にも、『ポケット詩集Ⅱ』と『ポケットⅢ』もありますが、まずはこれをお読みください。あまり大きな声では言えませんが、続編よりもいい詩が入ってます。
えっ、中身が知りたいですってお客さん。困ったなあ~、それじゃ商売上がったりだ。こういうものは開けてビックリ玉手箱、開けなきゃよかった玉手箱ですよ。しかし、昔のよしみでリストはお渡ししましょう。その代わり、またお願いしますよ。
茨木のり子 聴く力 (注 「聞く力」ではない)
まど・みちお くまさん
辻征夫 学校
大岡信 虫の夢
吉野弘 I was born
三木卓 系図
まど・みちお ぼくが ここに
草野心平 秋の夜の会話
阪田寛夫 練習問題
工藤直子 あいたくて
まど・みちお さくらのはなびら
石垣りん 表札
長田弘 言葉のダシのとりかた
岸田衿子 南の絵本
濱口國雄 便所掃除
山之口貘 求婚の広告(ぼくも出そうかな)
茨木のり子 汲む
井上ひさし なのだソング
高橋睦夫 鳩
会田綱雄 伝説
新川和江 わたしを束ねないで
長田弘 世界は一冊の本
河井酔茗 ゆずりは
真壁仁 峠
栗原貞子 生ましめんかな
与謝野晶子 君死にたもうことなかれ
谷川俊太郎 死んだ男の残したものは
川崎洋 なぜ
高村光太郎 ぼろぼろな駝鳥
金子光晴 奴隷根性の唄
茨木のり子 自分の感受性くらい
追記 すこし前に、絲山秋子さん原作の映画『ばかもの』を観ましたが、このタイトルってもしかして、茨木のり子の「自分の感受性くらい」の末尾のことば「ばかものよ」を拝借したのでは? と一人思った。