孤独なプロムナード
哲学の本を集めた書棚をうろつくのは危ない。ときに、矢のような書名が、眼に襲いかかって来る。
『孤独な散歩者の夢想』
わたし「うわぁーーーー、左眼をくり抜かれた。今のは痛かった……痛かったぞ!」
? 「くそ、心臓を外したか。おい、そこの素っ頓狂な男。いざ、尋常に勝負!」
わたし「フン、たかがスイス生まれの哲学者で、百科全書派の一人、パリのパンテオンに埋葬されている数少ない偉人のお前がわたしと勝負だと。面白い」
パカラッ、パカラッ、パカラッ、パカラッ、パカラッ(馬の足音)
ジャン・ジャック・ルソー「敵将、討ち取ったり!」
いや~、哲学者なんか相手にしてはダメですよ。あいつら、容赦のかけらもないから。英国の哲学者ホワイトヘッドによると、西洋のあらゆる哲学は、プラトンの哲学書の補足に過ぎないらしい。それから、名前はよく知れ渡っているイマヌエル・カント。まあ、ソクラテスとカントの二人が哲学の中心人物で間違いはないけれど、デイヴィッド・ヒュームとジャン・ジャック・ルソー、この二人の本を読まなければ哲学はできないらしい。
しかし、ヒュームの理論はむずかしくて、彼が示した経験から得られる人間の知性の限界を理解する前に、自らの知性の限界を知って絶望してしまう。あ、忘れてた。わたしのような普通の人間は哲学なぞする必要がなかった! そこで今日は、読み物として面白みのある哲学っぽい本をくすねてきやした。
正直に打ち明けてもいいですか? ぼくはこの本を余り理解できていません。したがって、興味を持たれた方は、後ろのほうにとても詳しい解説があるので、それを読んで自分の貴重な読書タイムのお伴にするかどうか決めてね。
ただね、ルソーは植物と水を愛する人で、そういうところが自分(わたし)と似ているから、分からなくても通じ合えるところがあるんです。普段のぼくは、女性にしか興味がないようなことを言ってますが、あれは仮初の姿なのかもしれない。
わたしの本当の姿は、杜へとつづく孤独な散歩道を歩く愚者なのである。
- 作者: ジャン=ジャックルソー,Jean‐Jacques Rousseau,永田千奈
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2012/09/12
- メディア: 文庫
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