名探偵ストンとわたしの共同事務所

調子はずれで個人的な雑談を繰り広げます。正直いって、ぼくは頭がオカシイです。テーマは、読書や映画、アニメ、日々の出来事、つまらない小ネタが中心でくだらない(笑)。寛容の心で読み流していただけたら幸いです。    <注>コメントや質問は大歓迎ですが、念のため承認制にしてあります。

エッセイの本場はイギリスですぞ

 くだらないことを楽しめる人や、褒められたときの困った笑顔が素敵な人、こういう人たちに悪い人間はいないとおもう。後者はすこし怪しいけれど。
 

 このエッセイ集の筆者は、英国で名を馳せた四人の名文士[A・G・ガードナー、E・V・ルーカス、ロバート・リンド、A・A・ミルン(『クマのプーさん』の作者だよ)]、柔らかな頭と抜群の観察眼を持つ彼らにとって、平凡な日常は宝の山だ。ルーティンな毎日に参っている我々には、巷で人気の日常漫画も必要だが、この手の模範の書はもっと必要だろう。もっとも、気晴らしに向いているのは漫画の方で、スポーツ漫画と日常漫画はたしかに面白い。
 

 しかし、漫画では養えない才幹があって、それは、読み書きに精彩をもたらす柔らかな頭である。もちろん、活字の本にも弱点はあり、活字だけでは絵に対する美的感性がお粗末になる。だから両方楽しもう。漫画好き、とくに日常漫画を愛する人に、胸を張ってすすめるわたしを見て、四人の名文士は微笑を浮かべるだろう。

 

たいした問題じゃないが―イギリス・コラム傑作選 (岩波文庫)

たいした問題じゃないが―イギリス・コラム傑作選 (岩波文庫)

 

 

やりなおし世界史

 あっ、文庫になっている、と心の声を漏らすことがある。
 

 一、二年くらい前、中公文庫の書棚で視線を泳がせていると、浮きが沈んだときの釣人にわたしはなった。獲物が掛かったのだ。急いでリールを巻いてみる。すると、上下を有する双子の書物が釣り上がった。と、冗談はこれくらいにして、本の紹介めいたことをやってみるか。
 作者はエルンスト・H・ゴンブリッチ。この人には二つの顔があって、一つは美術史の研究者として一家をなした人。『楽園のカンヴァス』を書いた原田マハさんも、この先生の著作から勉強をはじめたらしい(「作家の読書道」というWEBサイトより。このサイトとても為になりますよ)。そしてもう一つの顔は、誠実な歴史学者として、若い読者に世界史を語るお兄さん。お兄さんというのは、この大先生、なんと25歳でこの本を書いたらしい。驚きの一言です。
 

 しかし、もっとも読者の心を打つのは、「50年後のあとがき」という小文である。我々が歴史学者に求めるものは、学界の権威でもなければ、その学者の多芸さでもなくて、誠実な人間性ではないだろうか。この書物を片手に、一人こんなことを考えた。

 

若い読者のための世界史(上) - 原始から現代まで (中公文庫)

若い読者のための世界史(上) - 原始から現代まで (中公文庫)

 

 

 

若い読者のための世界史(下) - 原始から現代まで (中公文庫)

若い読者のための世界史(下) - 原始から現代まで (中公文庫)

 

 

ぼくが死ぬまでにしたい10のこと  その4

4. カミさんのつくったロールキャベツを食べる
 
 
 はい、今回は小芝居なしです。だってつくる意欲が湧かないもん。正直いって、カミさんを出すのに躊躇しましたが、まあ一回出せばいいだろうということで、この辺で出しときます。


はてなブログのみなさん「サイテー!!」
ぼく「サーセン

 
 二か月に一回くらいの頻度ですこし凝った料理をつくってくれる。まあ、ぼくのつくる料理は限られているので、こういう日もないと困るのだけれども。
 で、そのときはパンとワインに合う料理が多くて、ロールキャベツだったら嬉しいです。適度に酸味が抑えられたトマト味。わりと有名な一工夫だけど、爪楊枝の代わりにパスタで止める。これがおもしろいですよね。それと、ぼくの苦手なナイフとフォークでも食べやすい点とかポイント高いです。

 
 よしゃよしゃ、そろそろ本題に入ります (⌒-⌒)ニコニコ...
 今日は中里恒子の『時雨の記』。ある日、あまり本を読まない家内がこれを広げていて、どういう風の吹きまわしかな? と思って、
「きみが本を読むとは珍しいね。PS Vita(携帯ゲーム機)は故障かな?」
「これ、未亡人の恋の話なの。あなたが亡くなったあとのイメトレよ」

 ぷぷぷ、さすがにこれは作り話ですよ。これが今回の小芝居です(笑)。

 ですが、日ごろ本を読まない家内が読んでいたのは本当で、おまえも読んでみよとの下命により、しぶしぶページを繰ってみました。
 まあまあの出来なのだけど、このごろの小説にはない品があって、けっこう楽しめました。ヒロインの堀川多江という女性が、美人でも不美人でもない十人並みの設定のくせに、ものすごく魅力的なんです。
 あれなんですよ、最近は美人にこだわりすぎなのよ。一緒にいて心安らぐ人がいちばん。でもそんな人はそうめったにいないから、みんな容姿にこだわるんだろうなあ(笑)。
 
 もう一つ特筆したいのは、天麩羅を食べるシーンですね。冒頭のうしろのページにあって、この辺から小説の世界に入っていけます。ヒロインの多江が勢いよく豪快に食べるのを見て、主人公の男がその姿を可愛らしいと思う。印象に残るシーンです。
 それでは、あらすじをどうぞ。


〈20年ぶりに再会した男と女。どちらもお終いの恋をするような年齢。主人公の壬生孝之助は実業家であり、自分の欲しいものはすべて手に入れてきたが、いまの妻子との暮らしにどことなく不満を感じていた。
 そんな彼には、若いころ通夜の席で一目惚れした女性がいて、それがヒロインの堀川多江。ある日、思いがけず出会ってから、多江が一人で住む家に、孝之助が通うようになる。といっても、プラトニックな関係であり、はじめて異性とお付き合いするようなぎこちなさと、もう長年連れ添っているような安定感とが混在した、言葉では言い表せない関係を続けていって……〉


追伸
 映画にもなっていて、ヒロインはなんと吉永小百合。おいおい、多江の十人並みの設定はどこへ消えた(笑)。

 

時雨の記 (文春文庫)

時雨の記 (文春文庫)

 

 

みんなに愛された物理学者の珠玉のエッセイ

 笑いすぎると涙がでるのは、涙と笑いが無二の友だからである。
 

 いま、わたしが考えた言葉なので真に受けてはいけませんよ、とはいっても、シューベルトの歌曲に「笑いと涙」という曲があるらしい。どうやら涙と笑いが二人三脚で時をかけてきたのは本当のようだ。
 こんなことを空想したのは、おそらくファインマンのエッセイを読み返したせいだろうか。理系の人のエッセイを読んでいると、日頃使わない神経が刺戟され、おもわず読み耽ってしまうから困る。なかでもこの本は度々読み返す。
 

 殊に、一人めの妻の病を語った話がわたしのお気に入り。泣かせる話をするくせに、要所々々で笑わせてくれるので、話が深刻になりすぎない。程よく泣かせ、程よく笑わせ、最後はやはり‥・・・・
 他にもいいものが入っている。たとえば、チャレンジャー号爆発事故調査のいきさつや、科学の価値とは何か等。そしてもしかしたら、涙がでるほどの笑いにも出会うかもしれない。

 

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困ります、ファインマンさん (岩波現代文庫)

困ります、ファインマンさん (岩波現代文庫)